02 学びの方法|問いと推測をカリキュラムにする

問いを、
育てる。

生徒の弱さは、正解を出す力ではなく、問いを持つ力にあります。推測する力(アブダクション)を、3年間・6ステップで育てます。

🔍 問いを育てる6ステップ🔀 ずらす9つの型🧱 手で考えるワーク

WHY ABDUCTIONなぜ「推測する力」なのか

探究の場面でよく見られる弱さは、仮説ではなく、事実や一般論を書いてしまうことです。たとえば「初対面で仲良くなるには、最初に動いた方がいい」は、調べれば出てくるし、全員がうなずくので、フィールドワークの必要がありません。

演繹

前提から、確実に導く

仮説が正しければ、何が見えるはずかを考える段階。

帰納

集めた事実から、確かめる

フィールドワークはこの段階。

アブダクション

「こう考えれば説明がつく」

新しい考えを持ち込めるのは、この推論だけ(C.S.パース)。

探究は「アブダクション → 演繹 → 帰納」とつながります。参考文献:米盛裕二『アブダクション―仮説と発見の論理』(勁草書房、新装版2024年)、Warren Berger『Q思考』(ダイヤモンド社、2016年)。

6 STEPS背骨になる「問いを育てる」6ステップ

いまの問いを ver.0 として育てるのが軸です。ver.0 → ver.1 → ver.2 → 仮説と、問いの進化ログを書き足していきます。

1

違和感を拾う

外(事実とのズレ)と内(自分たちの動機)の「あれ?」。「問い」という言葉は使わず、「あれ?」を拾う。

2

広げる

要素を出しきる。What If で揺さぶる(マインドマップ)。

3

登る

「何のため?」で目的を登り、手段と目的を切り分ける。登りすぎない(自分たちで確かめられる高さまで)。

4

絞る

誰の・どの場面かに絞る。

5

仮説にする

「もし〜なら、説明がつく」の形に。一般論になっていないかを点検する。

6

確かめ方を考える

正しければ何が見えるはずか。前提を点検する。予想とズレたら、それが新しい「あれ?」としてステップ1に戻る。

反論が思いつかない仮説は、まだ仮説ではなく一般論。主語が大きすぎるときは、誰の・どの場面かを絞ると当たり前でなくなります。広げて、登って、また絞る。この往復で、ネットに出てこない問いになります。

3 YEARS3年間の段階

学年ねらい主なステップ現場での確かめ
1年違和感を拾い、広げる。観察の習慣をつくる1〜2観察と聞き取り(小さく)
2年仮説を立て、現場で確かめる3〜6フィールドワーク(帰納)。外部の大人の講評
3年他人の問いをずらせる側になる。成果を外に出す全体を回す+壁打ち役地域・全国・海外への発表

日常のトレーニング

朝の「あれ?」

朝の輪で1つ出し、観察ノートに残す。

データ1枚ドリル

地域の売上・観光客数・人の流れから「説明がつく仮説を3つ」。

推理型のケース

売れない特産品の原因、閑散期の理由を、地域の実データで。

手段と目的の切り分け

手段が目的になっていないか。入口ではなく、途中で本人が気づく形で。

AIAIは、答えを出す役ではなく「別の仮説を出す役」

STEP 1自分で仮説を書く
STEP 2AIに「別の説明を3つ」出させる
STEP 3現場で確かめられるものを自分で選ぶ
STEP 4確かめる前は「候補」として扱う

出典・入力した指示・日付を記録する。

海岸でドローンを飛ばす生徒
Digital / AI
島のお年寄りに話を聞く生徒
現場で確かめる

RUBRIC評価は点数ではなく、問いの進化ログに

アブダクションのルーブリック(案)。ポートフォリオの問いの進化ログに記入します。

観点1(入口)23(めざす姿)
一般論でないか調べれば出る事実・一般論誰の・どの場面かが限定されている限定され、予想外の見方を含む
反論できるか反論が思いつかない反論を1つ想定している反論を想定し、それに答える確かめ方がある
確かめ方があるかなし方法はあるが目的に合わない目的に合い、相手の負担(探究公害)も考えている
ずらしの質ずらしていない1回ずらしたずらして差分を比べ、気づきを言える
QFT(Right Question Institute)との違い:QFTは「質問を出して磨く」ことに強い手法です。本構想は、問いを仮説の形にして(ステップ5)、確かめ方まで考える(ステップ6)ことに重心を置きます。

9 SHIFTS問いをずらす9つの型と壁打ち

9つの型は、「パラメータを操作する」「ピントを調整する」「主役を入れ替える」「思考の殻を破る」の4グループに分かれます。ずらしは1回で終えず、「ずらす → 差分 → 気づき」の連鎖にします(例:10年前 → 今 → 10年後)。

対象
時間軸
場所・国
スケール
立場
極端
抽象度
前提
数字
6ステップ1 拾う2 広げる3 登る4 絞る5〜6 仮説・確かめ
よく使う型立場対象・時間軸・場所抽象度スケール・対象極端・前提・数字

外から来た人だから聞ける問い

朝の輪とスタジオの中間講評で、生徒同士・生徒と大人が壁打ちをします。生徒は地域の事業者に「業界の外にいるから聞ける問い」を立てます。先に国内外の事例を調べて全体像をつかみ、壁打ちの中でデータを足し引きして新しい案を出します。

探究公害に気をつける

全員が現場に行く必要はありません。行くなら目的を持つ。判断の軸は、問いのどの段階か、現場でしか得られない情報か、相手にどれだけ負担がかかるか、の3つです。

STUDIOBranding & Marketing スタジオ

地域の特産品を題材に、調べて、発信して、実際に届け、数字で振り返る2週間。「東京の真似をしない」視点で、その事業の価値を言葉にします。

1

机の上で調べる

特産品をつくる事業者を、公開情報で調べる。

2

現場で聞く

少人数で観察・インタビュー。質問は事前に共有。

3

価値を言葉にする

東京の真似をせず、その事業ならではの価値を。

4

発信を企画する

SNS、パッケージ案、多言語ページ。

5

実際に届ける

EC、マルシェ、ふるさと納税の返礼品ページの改善提案。

6

数字で振り返る

反応・売上・リーチ。

7

公開講評

事業者と外部の大人に向けて発表する。

公開情報で確認できた題材(いずれも協力先ではありません)

五島の椿

五島列島には約900万本の椿が自生し、日本一とされる。実の豊作・凶作の差が大きく販路を広げにくい、梅雨前に搾油を終える必要がある、が課題とされる(特区計画書。古い資料のため現状は要確認)。

かんころ餅・五島うどん

設備を入れて通販・島外販売に対応した事業者、空き店舗を改修して観光客向けの店を開いた事業者が、県の事例として紹介されている。

長崎市側の特産

陶磁器、菓子など。今後の調査対象として加える。

付箋だらけのホワイトボードの前で話し合う生徒
広げる・登る
企業の大人に向けて発表する生徒
外の大人の公開講評

設計例A:「島の椿」を島の外の人に届ける(10日)

日内容
1ブロックのワークで「椿の価値」を形にして語る。「あれ?」を3つ(ステップ1)
2〜3椿の生産・加工・販路の公開資料を調べる。広げる・登る(ステップ2〜3)
4事業者への取材(生徒2〜4名、質問は事前共有、1回60分以内)。絞る(ステップ4)
5「もし〜なら、説明がつく」で仮説を立てる。AIに別の説明を3つ出させ、確かめる順を決める
6〜7発信の企画:多言語の紹介ページ、パッケージ案、SNS投稿案
8事業者の承諾を得た範囲で試す(マルシェでの試食・アンケート、オンラインでの反応測定)
9数字で振り返る。予想とのズレを新しい「あれ?」にする
10事業者と外部の大人に公開講評
設計例B

「島外の人にも届く説明」とは?

通販・島外販売と観光客向け飲食の2つの事例を比べ、届ける相手(観光客・島民・島外の購入者)によって説明が変わることを体験する。英語・中国語の案内づくりを含む。

設計例C|長崎・街キャンパス

地場メーカーの新商品を高校生に届けるには

企業から実際の課題を受け、高校生に届く言葉・場・価格を調べ、試作と反応の測定まで行う。

受け入れ事業者の負担に上限を置きます(運営ルール案)。取材は1事業者あたり生徒4名まで・1回60分以内/質問は事前に送る/同じ事業者への受け入れは年2回まで/成果物は公開前に事業者が確認・修正できる/事業者には成果物と学習成果の報告を返す。数値は事業者の意見で見直します。

BLOCKSブロックを使ったワークショップ(独自設計)

言葉にしにくい考えを、手を動かして形にし、話す時間。チームづくり、島での3週間、スタジオの初日に使います。各60〜90分。

テーブルを囲んでワークショップをする人たちを上から見た様子
ワーク①|ステップ1

「あれ?」を作る

気になった場面をブロックで作る → 1人2分で語る → 聞き手は「それはどういうこと?」だけを聞く。

ワーク②|ずらし「立場」

立場を入れ替える

島の課題(例:空き家)を作る → 住民・観光客・行政・事業者の立場で作り直す → 差分から気づきを言う。

ワーク③|スタジオ初日

ブランドの価値を作る

特産品の「価値」を作る → 他のチームが読み解く → 読み違いを手がかりに言葉をそろえる。

名称と商標について:本構想は LEGO® SERIOUS PLAY® の認定ファシリテーターではありません。プログラムは独自の名称にし、「LEGO」「SERIOUS PLAY」を名称・ロゴ・広告に使いません。使うブロックの商標と本構想は関係がありません。

COMMUNITY地域との関わり

関わる相手ごとに、生徒が得るもの・相手が得るもの・負担の上限を決めておきます。大学名は椿の特区計画書に研究機関として出てくるもので、連携の約束があるわけではありません。

タイプ生徒が得るもの相手が得るもの関わり方負担の上限(案)
地場メーカー・農漁業者実課題、現場、事業の数字若い視点の調査、多言語発信、採用の入口課題提供、取材、講評取材は1回60分以内・年2回まで
自治体(長崎市・五島市)地域データ、政策の現場若者の提案、関係人口提案の場、データ提供提案は年1〜2回
観光・宿泊観光客の声、多言語案内の実践多言語の案内・SNS試験的な発信、アンケート実施日を事前に調整
大学(長崎大学、長崎県立大学など)研究者の講評、手法学生との接点、実証の場講評者、研究の相談連携の可否は未確認
移住者・地域おこし協力隊外から来た人の視点発信の機会語り手、同行者1回90分以内
金融機関お金の流れ、事業計画若者との接点、創業の芽講師、講評年数回
メディア発信の実践取材対象成果の公開、取材生徒の事前同意

地域に返すもの

  • 報告会と、事業者への成果物
  • 自治体への提案
  • 反応・売上・リーチの数字の共有
  • 地域の人が見られる学びの記録

海外の同世代との英語の対話

オンラインで週に組み込み、将来は年1回程度の現地訪問も。相手校・相手先は未定で、いまは「機会を設ける」ことだけを決めています。

PEOPLE招く社会人

起業家課題提供・講評・失敗談
地場メーカー取材・実課題・講評
デザイナー発信・パッケージ
エンジニアアプリ・データ
研究者確かめ方の相談
自治体職員政策の現場
移住者外からの視点
海外で働く人英語での対話
NPO関係者社会課題の現場
段階1ゲスト講話

単発。必ずスタッフが同席する。

段階2スタジオ講評者

スタジオの最終日。事前に説明する。

段階3〜4コーチ(業務委託)/メンター(採用に準じた手続き)

スタジオやクルーで継続して関わる。

日本版DBS(2026年12月25日施行)で、サポート校が義務の対象か認定の対象かは、参照した資料には書かれていません(施行後に所管へ確認)。どちらであっても同じ体制で運営します:継続して関わる人は採用時の確認・研修・誓約/単発のゲストには必ずスタッフが同席/1対1は見える場所だけ/生徒との連絡は学校のアカウントだけ/学びのフロアはカードで入室。

SHOWCASE発表は、学内で終わらせない

時期機会対象出す成果
学期末(年3回)公開展示(長崎・五島)地域、保護者、事業者その学期のスタジオの成果
通年事業者への成果物の納品取材先の事業者多言語ページ、提案
通年マルシェ・物産展での販売実験一般の来場者Branding & Marketing スタジオ
年1〜2回自治体への提案(長崎市、五島市)職員、議員2〜3年の探究
秋全国の高校生向けコンテストへの応募全国2年の探究、ビジネスプラン
通年英語での発表海外3年の成果
通年生徒が運営する発信(note、YouTube、Instagram)一般全学年

コンテストの応募資格は開校前に確認

高校生ビジネスプラン・グランプリ、全国高校生マイプロジェクトアワードとも、通信制・サポート校の在籍者が対象になるかは要項や記事に書かれていません。出られない場合は、提携本校の生徒として応募できるか本校に相談します。

生徒の発信のルール

  • 顔出し・実名は、本人と保護者が同意したものだけ
  • 取材先の情報は、公開前に事業者が確認
  • 学校のアカウントで運営し、個人のアカウントには誘導しない

AI RULESAIの使い方とルール

午前の学習

AIチューターは解説・問題づくり・誤りの指摘に使う。本校のレポートをAIに書かせて提出しない。

スタジオ

下調べ、壁打ち、多言語化、データの可視化、試作。答えは現場で確かめるまで「仮説の候補」。

教職員

ポートフォリオの整理や連絡の下書きに使い、最後は人が判断する。AIで減らせる人数は財務モデルに見込まない。

ツールの選び方

年齢条件、教育機関向けプランの有無、入力を学習に使わない設定があるかを導入前に確認。個人情報は原則入力しない。